2007年1月22日月曜日

ザ・ファウンテン

Darren Aronofsky 「THE FOUNTAIN」 (2006)


π (パイ) のダーレン・アロノフスキー監督の新作を ハッケッシャー・マルクトにある映画館キノ・ツェントラールで観た。主人公の男性は現代に生きる脳医学の研究者で、猿の脳を解剖してて、奥さんは病気でもうすぐ死ぬらしい。そして中世ヨーロッパに生きる同主人公は、奥さんと同じ女優が演じるお姫様の願いで、不老不死の薬を探す旅に出る。そしてもう一つ、未来の大きな木の下に佇む主人公。この3つの異なる時間軸が前後入り乱れながら、物語が進んでいく。現代の奥さんが癌で亡くなって、その奥さんがノートに書いていた物語が過去の中世の騎士物語と繋がり、その物語に登場する主人公が最後に不老不死の木を見つけた時点で、未来に生きる主人公の姿へと繋がる。

ストーリーは単純。愛する妻の死を主人公が時空を超えた心の旅を終えて乗り越える。登場人物達の演技は大げさ。とても悲しいのは分かるんだけどいつも同じトーンで深刻すぎるのはかえって現実味に欠ける感じで、演出の意図に反して観客の方がしらけてしまうような場面も。映像的にはきれいに出来てるところもあるけど、例えば未来の主人公が浮かび上がって座禅のポーズのまま宇宙空間を駆け抜ける場面などは、新興宗教の教育ビデオを見ているようなキッチュさ。これが真面目すぎる演出と相乗効果を生んで、ちょっと正視するのがつらかったりもした。

一番気になったのは、マヤの古代文明、中世ヨーロッパの異端尋問、東洋宗教のヒッピー的解釈 (?) といった、あらゆる神秘主義的事象が全く節操なくミックスされているところ。(そしてそれらの精神世界が収斂するのがここでは現代の脳医学。) こういった、異文化の神秘的なエッセンスだけをリアリティーが欠如した形で困難なく採り入れてしまって、その上でまじめでいられるところが、アメリカなのかな、と考えた (行ったことないけど)。そういう文化人類学的興味で観るならおすすめ。

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