2006年11月21日火曜日

マシュー・バーニーとヨーゼフ・ボイス

all in the present must be transformed
Matthew Barney
und Joseph Beuys


マシュー・バーニーの映像作品をちょっとじっくりと見たことのある人なら、誰もが一度はその中に登場するオブジェ群からヨーゼフ・ボイスを連想したことがあると思う。この二人の仕事の共通点にスポットライトを当てた企画展がベルリンのグッゲンハイム美術館で開催されている。

展覧会の構成そのものはごく単純。「標本ケース」、「彫刻」そして「ドローイング」といったキーワードを類似点として両者の作品を並列して展示している。表現形式のみに収斂されてる比較自体はとても退屈だけど、作品個々がつまらないというわけでは全くないところがこの展覧会の救い。

入り口を入ってすぐの展示場にはバーニーとボイス、それぞれによる標本用ガラスケースに入れられた作品が展示されている。ボイスの場合、展示ケースに自然物の標本の代わりに自身のアクションで使用したオブジェを収めることによって、芸術が自然や社会から切り離されてはいけないという主張を表現しているそうだ。バーニーの標本ケースは、映画CREMASTER を立体として提示・エディション化するために用いられている。蜂の巣 (CREMASTER 2) やアイルランドの旗 (CREMASTER 3) など、映画作品の内容を象徴するオブジェと共にDVDが中に収められている。エディション付き超豪華カバー入りDVDといったところ。

次の部屋では両者の大きな彫刻作品がひとつずつ床面を占め、壁にはぐるりと両者のドローイング作品が交互に掛けられている。ボイスの立体作品Terremoto (1981) はイタリアの新聞Lotta Continuaの後援によりローマで行われたアクションをもとに成立した。先の標本ガラスケースにおいてと同じように、アクションの結果として生まれた物質を用いた彫刻には、見るものに過去となり消え去った行為を指し示す媒介としての役割が与えられている。バーニーの彫刻作品Chrysler Imperial (2002) で床に並べられたプラスチック製の自動車は、クレマスターでの一モチーフであったクライスラービル内での自動車の破壊を直接思い起こさせる。映画という時間芸術の枠の中での出来事を我々の存在する空間に現出させ、その出来事を指し示す役割を担わす、といった点でバーニーの彫刻作品はボイスのそれと共鳴する。

一番奥の展示室には、モニターに両者のパフォーマンスの記録映像が流され、その隣にはそれらの行為の結果として生成した彫刻作品が両者からひとつづつ展示されている。ボイスの作品「ユーラシア棒」の成立は1968年にアントワープで行われたアクションによる。この棒は東洋と西洋を隔てる境界、そして当時の東西ドイツの境界を繋ぎ合わせる棒だそうだ。バーニーの行うパフォーマンスもまた同じようにパフォーマンスを通したオブジェへのインタラクティブ性を見せるが、スポーツを通して自己の肉体を極限状態におき、そこから形体を生成する。

アメリカ人のバーニー、ドイツ人ボイス。表現形態が似ているだけにかえって、細かく個々の作品を見ていくと、内容面で両者の相違がさらに際立つ結果となった。またこの展覧会で見られる作品はバーニー本人により設置され、展覧会開催に併せてベルリン市内の映画館で上映される両者のパフォーマンス・フィルムも、バーニーの編集によるとのこと。そんなことを考え合わせると、この展覧会はアメリカ人バーニーが自己をヨーロッパから脈々と継続する美術史コンテキスト内に配置、歴史化する企てのように思えてくる。自身の作品をすでに伝説と化した芸術家と併置させることで、自己を美術史のコンテキストに取り込もうとする試みではないのだろうか。クレマスターの中で様々な舞台装置に合わせ常に異なるキャラクターに変容してしくバーニー。そんな彼がここでは「大芸術家」を演技しているようにも見えた。

all in the present must be transformed
Matthew Barney und Joseph Beuys
28. Oct 2006- 12. Jan 2007
Deutsche Guggenheim, Unter den Linden 13/15, 10117 Berlin, Germany

ドイツ・グッゲンハイム美術館へのリンク:
http://www.deutsche-bank-kunst.com/guggenheim/
展覧会へのリンク:
http://www.deutsche-bank-kunst.com/guggenheim/d/ausstellungen-barneybeuys01.php