2007年5月15日火曜日

トーマス・ヒルシュホルン 「スタンド・アローン」

世界をありのままにとらえる。

段ボール、ガムテープ、カラーコピー、ベニヤ板、ペイントスプレーなど、使われている素材は安物ばかり。そんな素材で、 トーマス・ヒルシュホルンは自身の住む世界、カオスが支配するこの世界を、解釈を通すことなく感受するそのままに提示したいんだそう。


それぞれの部屋の真ん中にははりぼての木の幹がどんと横たわっていて、観客の動きを不自由にする。かがんだり、またいだり、作品を壊してもいけないので結構大変。このはりぼての幹には、モニター状に画面がくり貫かれてて、人間の無惨な血みどろイメージがはめ込んである。
写真の奥に見えてる、床に積み重なる緑色の物体は、YOU とかかれた錠剤。見た目的にも大きさ的にも郵便小包みたい。この展示で目を引くオブジェのひとつです。

一部の壁には電話器、テレビ、コンピューターのモニターやキーボード、ファックスなど現代の情報メディアが壁にテープで縛りつけられてる。



部屋は4つに分かれていて、それぞれの部屋に作り物の暖炉がある。暖炉のサイズは現実よりも1.5倍くらい大きめで、形態の具体性に非現実性を付加して、シンボリックな表現に成功している。

全体的にもこの尺度のずれ (錠剤、木の幹、暖炉など) が、このごみに埋もれた展示室を異化させるのに成功してるように思えます。

暖炉には廃材がくべられていて、エロス、政治、美学、哲学の EWIGE FEUER (永遠の炎) が絶えることなく燃え続ける。暖炉の上には4つのテーマごとにそれぞれ本が山積みされいる。バタイユやドゥルーズなどいろいろ。重ねられてる本は紙にきちんとリストアップされていて、本の選択がすごく重要なことをうかがわせる。


表現自体は、ダダの流れを汲んでて、つぎはぎのなんちゃってな表現はおもしろいんだけど、メッセージがちょっと大げさでえらそう。でもこのエネルギーには脱帽。


展覧会INFO

Thomas Hirschhorn/ Stand Alone
Galerie Arnt&Partner

6月7日まで

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