2009年7月22日水曜日

絵画の問題について 3−3

イミ・クネーベル

グッゲンハイム美術館と同時進行の新ナショナルギャラリー でのイミ・クネーベル展 『ZU HILFE, ZU HILFE ... 』。

このミース・ファン・デル・ローエ設計の美術館の斬新なところは、地上階が四方ガラス張りのがらんどうで、地下が展示スペースになっているところなのですが (参考)、クネーベルはこの地上階の空間に自己の作品を完全に関連付けています。

美術館の入り口を入ったところには門のようなオブジェ。 三つの大きさの異なる入り口。

『助けてくれ、助けてくれ・・・』(1987年)

この門の作品の他には一見、何もないように見えますが、ホール中央に対称的に並ぶ二つのクローク・ルームの裏側に、作品が隠されています。

『19号室 III 』 (1968/2006年)

西側クロークの裏にあるのは『19号室』と題された作品で、オリジナルは1968年制作。クネーベルはヨーゼフ・ボイスの生徒だった頃にアカデミーの19号室をアトリエとして使用しており、その部屋で成立して公開された、彼のキャリアの出発点となった作品。

横の隙間から見るとこんな感じ。パネルとか木枠が重ねられています。


この辺からすでに、立体でありながらも「絵画」に形式的にアプローチをする、彼の一貫した姿勢が見て取れます。

『バッテリー』 (2005年)

もう一方の作品も同じくクロークの裏側に。奥に見える淡い緑色の立方体には良く見ると蛍光塗料が塗られています。夜になると光るのでしょう。
このエネルギーを保存して自ら光るオブジェと、作品タイトル「バッテリー」がもろにボイスを想わせます。


こちらがベルリンのハンブルガー・バーンホフ美術館にあるボイス作品。脂肪の塊がエネルギー貯蔵庫として象徴的に扱われています。


『ポツダマー通り50番』 (2009年)

美術館の住所が作品タイトル。ミース・ファン・デル・ローエのガラス壁が白っぽい塗料で覆われており、曇りガラスのように外からの光を通します。

よく見ると塗料には微妙に色差がつけられいて、幾何学的な抽象絵画のようにも見れます。

「絵画」を意識して意図的に残された筆跡。



ところで、現在同時開催されているシュールレアリスム展 (Bilderträume) ですが、これがなかなか面白かったです。冒頭で他のシュールレアリスト達を凌駕するマックス・エルンスト作品の美しさを堪能し、展覧会後半ではポロック、ニューマンやロスコなど、アメリカ抽象表現主義の代表的作家達の初期の作品群が展示されていて、これらが戦時中に次々にアメリカへと移住していったシュールレアリスト達直接の影響を受けていることを直に目にすることが出来ます。

抽象表現主義、またはカラー・フィールドとも呼ばれたりする作品群だけからはなかなか見えにくい真実です。

ヨーロッパのシュールレアリスムとそれを原初とするアメリカ抽象表現主義、この作品の表面上ごく似通っている両者の本質が同等であるか異なるのか、異なる場合はどう異なるのか、そんなことを考えてみると面白いかもしれません。


Imi Knoebel 展 『zu Hilfe, zu Hilfe... 』
Neue Nationalgalerie にて2009年8月9日まで


Bilderträume 展
同じく Neue Nationalgalerie にて11月22日まで


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