2007年1月11日木曜日

キシェロフスキの 「赤」

クシシュトフ・キェシロフスキ監督の 「トリコロール 赤の愛」 (あらすじ) に登場するメディア、コミュニケーションの媒体について。

電話
・ 主人公とその恋人
・ 主人公とその家族
・ 法学生とその恋人
・ 天気予報サービスを利用する人々
・ 内密にゲイの恋人と電話をする父親とその会話を隠れて聞く娘、ヘロイン密売に日本製の電話を使う男

マスメディア
・ 船の事故についての新聞記事、テレビ報道。
・ 「モデル」 というヒロインの職業。写真や街頭ポスターなど、メディアの中に存在する
・ ラジオ (ヒロインが犬を過って轢く直前に混線し、ハプニングを予感させる)

退官判事は 「神」 のメタファー?
・ ヒロイン以外の人物との直接のコミュニケーションは無い。(ヒロインもまた老人以外の人物と直接触れ合うことはない)
・ ヒロインとの出会いはまた、犬という媒介を通して起きる。
・ 判事という職業 = 裁く者
・ 人のプライベートを盗み聴くという行為。
・ 他の人物とのコンタクトは媒介を通してのみ: 老人の自宅の窓に投げ込まれる石 (他者の悪意)

そしてコミュニケーションの不成立
・ ミュージックショップで登場人物達がお互いを知ることなく隣り合わせにヘッドフォンで音楽を視聴するシーン。それぞれの頭に響くそれぞれの音楽。 (個人的に好きなシーン)
・ ボーリング: プレーヤーが直接対峙するのではなく、個々がレーンに立ち成立するゲーム。
・ イギリスに居る恋人の不理解
・ 恋人の裏切りを最後まで理解できない若者

そして映画の最後に、難破した船から救出される3部作 (青・白・赤) における主要登場人物7人。この荒唐無稽な演出も、「登場人物が助かった」 のではなく、「助かった人々を物語の中心に据えた」 と考えてみると、そこで物語の因果的構築がひっくり返され、より大きなまなざしで3部作を見つめることになる。

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