ベルリンでTOPクラスのギャラリーが集まる場所、ツィンマー通り (Zimmerstrasse)。 そこで開催されたニューヨークを拠点に活躍するヨナタン・ホロヴィッツの展覧会『People Like War Movies』を見ました。
ギャラリーのドアを開けるとそこにはポップコーン・マシンのオブジェが。
これももちろん作品なのですが、ここでは、ポップコーンは自由にもらえます(おいしくない)。
ガラスケースには展覧会タイトル Poeple Like War Movies と書かれており、ポップコーンの紙袋には元アメフト選手でアフガニスタンで戦死した英雄、パット・ティルマン (Pat Tillman・参考) の肖像が印刷されています。
メディアにおけるスパースターと戦争。
ポップコーン・マシンのオブジェの脇を通り過ぎ、次の展示室に入ると、暗い室内でジュースの自動販売機がネオン光を放つ。自販機をよく見ると、現実では決してありえないペプシとコカコーラの組み合わせが。
実際に1ユーロ硬貨を投入してコーラかペプシかだけを選べます。
ここでも市場経済におけるという意味で「戦争」の概念が重なってきます。
実は、1ユーロを入れて買ってみたのですが、実際に買おうとするとどっちに決めたらいいのか、ものすごく迷いました。どっちでもいいから、という理由からですが。
美術史的観点から論じるのであれば、これらのふたつのオブジェには50年代ポップアート美学が引用されているといえます。しかしこの時代はまた、テレビや映画などのマスメディア&エンターテイメントが発達した時代でもあります。
ポップコーンとコーラを手に、会場の奥へ進むと次にあるのは映像作品。エルビス・プレスリーの映像とリドリー・スコット監督の劇場映画『ブラックホーク・ダウン』の断片を繋ぎ合わせた作品です。
このモンタージュは、1958年のエルビス・プレスリーの兵役と、1993年にソマリアで戦死した兵士クリフ・エルヴィス・ウォルコット(映画『ブラックホーク・ダウン』の登場人物)の二人の人物をかけあわせています。
また、モンタージュ内では、エルビスのコンサート風景に交えて彼の徴兵についても言及しており、そこでも展覧会のテーマである「戦争」とリンクしていきます。
ポップコーンを食べコーラを飲みながら映画館でプレスリーと戦争の映画を観たあと、さらに奥の部屋に進みます。
ここであっと驚くどんでん返し(?)が。
この部屋の壁面 (入ってから後ろを振り返ったところの壁面。ちょうど映画スクリーンの裏側)には、壁一杯に惨殺された人間の死体が引き伸ばされて貼られています。この、大衆ポップ文化の 「裏側を見せる」 という演出に、ギャラリーの空間を利用する言語感覚はこちらで見るアートの典型でもあります。
また、死体写真のそばには、この写真の出所を説明する小さなメモが一枚掲げられています。その説明によると nowthatsfuckedup.com というポルノサイト(現在は閉鎖)が、クレジットカードの使えなかったイラクやアフガニスタンなどの戦地にいる兵士達に、クレジットカードでの支払いの代わりに戦場写真を提供することでコンテンツ閲覧を可能にし、その写真の内の一枚を引き延ばしたものがこの死体写真だそうです。
People Like War Movies. 大衆は戦争映画が好き。でもコーラもペプシもエルビスも大好き。そして現実の戦場では、お金と性欲と残酷写真が交錯する。
Jonathan Horowitz/ "People Like War Movies"
September 1 - October 20, 2007
Galerie Barbara Weiss
Zimmerstrasse 88-91
10117 Berlin
0 件のコメント:
コメントを投稿