2009年6月11日木曜日

絵画の問題について 2−3

イミ・クネーベル

同じくグッゲンハイム 『Ich Nicht』 に展示されている『グレース・ケリー』 と題された作品。

『Grace Kelly』 (1989/2005年)
絵の具で塗られた色面を切り取り、重ね合わせ、額に収めるといったシステムに則って全ての作品が作られています。 小さい作品群の一番左上のパターンが大きい作品と同じになってます。このシステマチックな制作方法は、作品タイトルと共に自ずとウォーホルを連想させます。

キャンバス裏面の木組みを連想させる造形は、本来の絵画が作品表面の後ろに隠されていることから、視覚でとらえることの出来ないプラトン的な美イデアを想わせます。

女優グレース・ケリーの美しさ、また造形と関連してアメリカの色面抽象画家エルズワーズ・ケリーなどなど、連想は多重化していきます。

(1)− 2 −(3)

2009年6月8日月曜日

絵画の問題について 1−3

イミ・クネーベル

現在ベルリンのグッゲンハイム美術館と新ナショナル・ギャラリーの2箇所で平行して、イミ・クネーベル (Imi Knoebel) の新作-旧作を合わせた展覧会が行われています。

クネーベルは1940年生まれ、デュッセルドルフ美術アカデミー伝説のヨーゼフ・ボイスのクラスに所属していました。ボイスに師事したことが常に履歴の筆頭に挙げられる作家ですが、彼の作風そのものにボイス直接の影響はそれほど見られず、マレーヴィチ、モンドリアン、ニューマンなどの系統にある伝統的モダニズムを継承するオーソドックスな 「絵画の問題」 に取り組んでいます。

とはいえ、このように全く作風の異なる作家たちを生み出したことが、ボイス・クラスが「伝説」となる所以でもあるのですが。

まずはグッゲンハイムで行われている 『ICH NICHT』 に行ってきました。

ホールの中央に並ぶ巨大なオブジェが2009年の新作 『Ort - Blau Rot Gelb』 (場 - 青 赤 黄) です。

入り口から見た様子。


縦に長いホールの中央には、アルミニウム製の箱型オブジェが4つ並んでいます。一番手前のオブジェでは、梱包材を思わせるような造りの裏面が入り口に向かうように設置されています。

まずはこのアルミニウム剥き出しの裏面からぐるっと正面に回ります。



箱型の構造は正面に向かって開かれた空間を成し、観る者の視線を赤・黄・青の色彩空間の中へと取り込みます。

正面と左右の色面はアルミの基底上にペンキが直接刷毛で塗られており、剥き出しのアルミニウムが敷かれた底面は上部の色を反射しています。


足元に広がるイリュージョナルな深淵へと誘引する効果は、カラー・フィールドの作家たちが取り上げた 「瞑想的」 なものへのクネーベルの解答といえます。
計4つのオブジェは、それぞれ2つずつ向かい合わせに設置されており、観客を取り込む効果を補強します。
作品は全て、赤、黄、青の基本色のみの組み合わせから成っており、色の配置や色面の大きさにはバリエーションが付けられています。 光沢のある工業用ペイントは、側面に直角に屹立する面と正面とで反射し合い、混ざり合い、青は紫に、黄色はオレンジに、赤はピンクへなどなど様々なスペクトルを見せます。


モダニズムの巨匠バーネット・ニューマン (1905-1970) のシリーズ作品 『Who's Afraid of Red, Yellow an Blue』 との対話。



つづきへ:1 −(2)(3)